スクーターのマフラー交換とセッティング変更で加速の変化をチェック

 

今回は、スクーター(スズキ アドレスV125S)のマフラー交換&セッティングです。交換するマフラーは SP武川のサイレントスポーツマフラー
JMCA政府認証を取得しており、排気音量と排気効率が少しUPするという、比較的おとなしめのマフラーです。マフラー交換後、セッティングを変更しながら、加速の変化をチェックしたいと思います。

 

 

マフラー交換作業

マフラー交換作業は比較的容易です。まず、シート(メットイン)を外します。

 

 

次に、O2センサーのカプラーを外します。奥まった箇所なので、ちょっと外し難いです。

 

 

配線を固定しているクリップも外します。

 

 

これで、O2センサーの配線がフリーになりました

 

 

ちなみに、O2センサーのカプラーと同じ種類のカプラーを使って延長配線を作成すれば、わざわざメットインを外さずにマフラーが外せるという裏技もあります。リアタイヤ・リアブレーキシューを交換する時にも、マフラーを外す必要がありますので、意外と便利かもしれません。

ただし、長くなった配線の取り回しを考えて固定しておかないと、重いカプラー部分が走行中にブラブラ動いて断線する可能性があるので、あまりオススメしません(だったら言うな…笑)

 

 

冗談はさておき、純正マフラーを外していきます。車体の下側から、マフラーをヘッドに固定しているナットを2箇所外します。

 

 

次に、マフラーをクランクケースに固定しているボルト2箇所外します。

 

 

これで、純正マフラーが取り外せます。

 

 

純正マフラーとサイレントスポーツマフラーを比較すると、重量は同じくらい、サイレンサーが純正よりも少しだけ大きく、エギゾーストパイプも少し太めですね。

 

 

次にガスケットを交換します。これは、すでにガスケットは取り外した後の写真ですが、写真の窪みにガスケットがスッポリ収まっていますので、マイナスドライバーやプライヤーを使って取り外します。再利用はできませんので、強引に外しても構いません。

 

 

取り外したガスケットはコチラです。

 

 

次に新品のガスケットを取り付けます。できれば、この純正ガスケットを使用することをオススメします。

その理由というのは、純正品には向きがあり、写真の凸部が有る方をエンジン側にして取り付けるのですが、これは、ヘッド側の窪みにセットしたときに、折れ曲がって つっかえることで、脱落を防止する為のモノなのです。じつは市販のガスケットには、この凸部が無く、窪みにガスケットをセットしても、ポロっと落っこちてしまうので、脱落を防ぐために耐熱性の液状ガスケットを併用して、ヘッド側にガスケットを貼り付けた状態でなければ、マフラーを取り付けることができないのです。

そんなわけで、作業に慣れていない、または耐熱液状ガスケットが無いという場合は、純正ガスケットを用意しておいた方が無難です(純正ガスケットと市販品の価格差はありません)。

 

 

今回は、マフラーに付属していたガスケットを使用する為、耐熱液状ガスケットを塗って取り付けます。

 

 

こうすれば、ポロっと落っこちるコトはありません。

 

 

次に、純正マフラーからO2センサーを取り外して、サイレントスポーツマフラーに移植します。かじり防止のため、スレッドコンパウンドを塗布しますが、大量に塗る必要はありません。ねじ部の先端に少し塗っておけば、締め込むときに浸透します。

 

 

マフラーを車体に取り付ける際は、すべてのボルト・ナットを仮締めして、異常がないか確認してから本締めします。後は、O2センサーのカプラーと、シート(メットイン)を元通りに取り付ければ交換作業は終了です。

 

 

純正マフラーは、加工精度が良くエギゾーストパイプ径も細いので、取り付け・取り外しは容易です。市販のマフラーは、エギゾーストパイプの形状によっては、ヘッド側のボルトにフランジの穴が合わずに、取り付けに苦労したり、工具が真っ直ぐに入らず、ナットの締め付けが難しい場合があります。サイレントスポーツマフラーも、フランジ固定ナットに(片側だけ)六角レンチが真っすぐ入らず締め付けに苦労しました。

 

 

マフラー交換後(耐熱液状ガスケットを使用した場合は、硬化するまで1日放置)、エンジンを始動して、ヘッドとマフラーフランジの隙間(ガスケットが挟まっている所)から排気漏れがないか、音と手をかざして確認しますが、強制空冷エンジンは、ファンから風が流れてきて排気漏れが分かり難いので、一時的に空気の取り込み口を塞ぐとチェックし易いかもしれません(マフラーに触れてやけどしないよう注意!)。いずれにせよ、エンジン下部の狭い場所なので作業し難いことは確かです。

 

 

 

サイレントスポーツマフラーのインプレ

マフラー交換後のインプレッションです。まず排気音量。これは純正と同程度ですが、若干ながら低音が強く、高回転でエンジンが回っている時のガラガラという機械音が、ちょうど良い具合にかき消されてGOODです。これくらいの排気音量なら、住宅地での早朝・深夜のエンジン始動も気にする必要は無さそうです。

パワーに関しては、高回転域で少しだけパワーが上がっている感じです。最高速は少しだけ上昇しているため、純正マフラーに比べてトップエンドでの伸びは良いと思います。ただし、ポン付けでは、明らかに遅くなるので、駆動系のセッティングが必須です。基本的に市販のマフラーは高回転域でパワーを発揮するよう作られているものが殆どですので、WR(ウエイトローラー)をかなり軽くして、パワーバンドで変速するようにセッティングする必要があります。排ガス規制対応のマイナーチェンジ以前のモデルと同じ17グラム×6個にしているケースが多く見受けられますが、17グラムでは重過ぎます。最低でも13グラムあたりまで軽くしないと、加速が鈍ってしまいます。

 

 

 

マフラー交換・セッティング変更して加速テスト

マフラー交換および、各種セッティング変更を行いながら、0-60km/hのタイム計測・比較をしてみました。タイム計測したのは、次の7パターンです(エアクリーナーは、デイトナ製のハイパフォーマンスフィルターを使用)

 

  • (WR 19g)純正マフラー(フルノーマル状態)
  • (WR 19g)サイレントスポーツマフラー
  • (WR 10g)純正マフラー(ここからウエイトローラー10g)
  • (WR 10g)サイレントスポーツマフラー
  • (WR 10g)純正マフラー+エアクリ
  • (WR 10g)サイレントスポーツマフラーエアクリ
  • (WR 10g)サイレントスポーツマフラーエアクリ燃調

これらの加速を比較した動画です。

動画中で表示しているタコメーター(エンジン回転数)は、サブコンから抽出したデータを使用しています。O2センサーの補正は効いた状態(純正の状態)でテストしていますが、終盤の燃料増量時のみ、正しく増量されるようにO2センサーの補正をカットしています。燃料の増量は、全開加速で使用する高回転域のみとし、最大でインジェクターの噴射時間を10000分の2秒間(0.0002秒)だけ長くしています。マフラーと同じメーカーであるSP武川製FIコントローラーなら2ポイント分の増量に相当します。

 

テスト結果から、0-60km/hタイム が速い順に並べると

  • 5.99秒(WR 10g)サイレントスポーツマフラーエアクリ燃調
  • 6.27秒(WR 10g)サイレントスポーツマフラーエアクリ
  • 6.40秒(WR 10g)純正マフラー
  • 6.50秒(WR 10g)サイレントスポーツマフラー
  • 6.60秒(WR 10g)純正マフラー+エアクリ
  • 7.17秒(WR 19g)純正マフラー(フルノーマル状態)
  • 7.58秒(WR 19g)サイレントスポーツマフラー

 

動画の内容から分かるのは、マフラー交換だけでは良い結果にならないという事です。吸排気のバランス・駆動系と燃調セッティングも併せてトータルで見直す必要があります。それと同時に、いかに純正マフラーが高性能であるか よく分かりますね。高い消音効果と排気効率の両立が素晴らしく、さすが純正部品という感じです。コストパフォーマンスの観点では、フルノーマル状態からウエイトローラーだけ交換するというのが一番かもしれません。

動画には収録していませんが、純正マフラーのピークパワー約7500rpmに対して、出力特性の変化を探る為に、ウェイトローラーを10グラムから徐々に軽くして加速テストしてみましたが、9グラムではタイムに差が出るほどの違いはなく、それ以降(8グラム、7.5グラム、7グラム)は、軽くなればなるほど緩やかにタイムが落ちるという結果になりましたので、純正マフラーに比べて、出力特性に大きな差は無さそうです。このマフラーでは10グラムくらいが限界で、実用的には12グラムあたりでしょうか。

ちなみに、純正マフラーの新品価格は、サイレントスポーツマフラーの倍以上です。純正マフラーの劣化によって交換が必要となった場合、今ならまだオークション等で程度の良い純正マフラーが低価格で手に入りますが、この型のアドレスV125は生産終了していますので、段々と手に入り難くなると思います。そんな時のマフラー候補としても、純正に近いルックス・排気音量でありながら、しっかりパワーUPも果たすサイレントスポーツマフラーは、とても良い選択かもしれません。

 

 

 

マフラー交換を検討する際の注意点

市販マフラーの多くは、純正マフラーに比べて排気効率が良く、高回転でパワーが出せる造りになっていますが、その代わりに低回転域でのパワーが犠牲になってしまうことが多いです。スクーターは、マニュアルトランスミッションのバイクと違い、変速するエンジン回転数をウエイトローラーの重量でコントロールしますので、パワーが出る高回転で走らせるには、ウエイトローラーの同時交換(軽くする方向)が必須です。ウエイトローラーを軽くすると、純正車両に比べて、高回転で走行することになりますので、当然ながら燃費は低下し、長い目で見るとエンジンや駆動系部品の消耗が早くなってしまうことも忘れてはいけません。

次に排気音量。『うるさいのはチョット…』とか、『音はデカい方が良い!』など、人それぞれ好みがありますが、『思ってたのと違う…』と、ならないように、購入前によく調べた方がよいでしょう。意外かもしれませんが、JMCA政府認証マフラーであっても、けっこう排気音量が大きなマフラーもあります。

また、パワーアップについて過度な期待もNGです。市販マフラーは安い買い物ではありませんが、それに見合うだけの効果があるかは別の話。上の動画からも分かるように、純正マフラーというのは、消音効果と排気効率が高次元でバランスしていますので、市販のマフラーに交換することで得られるパワーは、それほど大きなものではありません。車種にもよりますが、アドレスV125シリーズのように、高回転が苦手な2バルブエンジンなら尚更です。パワーアップが目的ならば、ハイコンプピストンに交換するほうが、費用対効果は高いかもしれません。

市販のマフラーは、手軽にバイクの走りや外観を変えることが出来るパーツですが、良く調べてから購入したほうが良さそうですね (^^ )

 

 

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